はじめに
うごメモとは
以上の目的をもって研究を行うにあたっては、何よりもまず、うごメモについての基本的な認識を共有する必要があるでしょう。そこで、最初にこの点を確認することとします。
ただし、共通認識とはいっても、うごメモについてわたしが多少なりとも知っているといえるのは、「棒人間」と呼ばれるジャンルの、そのまた一部についてだけです。したがって、以下に示すうごメモに関するわたしの理解は、必ずしも十分なものではなく、また間違いが含まれているおそれもあることをご了承ください。うごメモに関する正しい理解のためには、任天堂HPやWikipediaの該当ページなどを参照することをお勧めします。
その上でわたしなりに説明するならば、うごメモとはようするに、任天堂ゲーム機DSシリーズのソフト「うごくメモ帳」の機能を用いてごく短い動画などを作成し、またこれをほかのユーザーと共有し、さらには各々の作品を評価しあって楽しむものであったといえるでしょう。うごメモの運用期間は、DSiおよびDSiLLが使用されていた前期と、3DSの導入によって3D表現が可能となった後期に大別でき、前期と後期では、いわゆる2D と3Dという表現技法の違いのほかに、作品公表と共有のシステムも異なっていました。しかしながら、いわば電子パラパラ漫画あるいはバーチャル紙芝居とでも称すべきものを個々のユーザーが自作し、それをみんなで見せあって楽しむというスタイルは、全期間を通じて不変でした。うごメモとは、このようなものでした。
このうごメモに、10代の少年少女を中心に多くの人たちが魅了されました。わたしの息子ゴロハチVXも例外ではなく、やはりある時期からうごメモに夢中になりました。
ゴロハチVXの略歴
ゴロハチVXは、2000年の初夏に熊本県熊本市で生まれました。同地で健やかに成長し、10歳になるころにうごメモと出会います。
その後、うごメモ界のレジェンドのたぁくみ氏に影響されて、DSiとDSiLLを手に「VS棒人間」ネタを中心に活動するようになり、やがていわゆる「銀行強盗シリーズ」でブレイクしました。
2012年の夏に「学校シリーズ」を開始。その直後に新潟県新潟市に転居。「学校シリーズ」は、うごメモユーザーからの圧倒的な支持を獲得します。
3DS期に移行してからも「学校シリーズ」を中心に活動を続けていましたが、高等学校入学後しばらくして、うごメモ界からフェードアウトしてしまいます。
2021年2月現在、大学2年生。
ゴロハチVXの作風
冒頭でお伝えしたとおり、このブログは、「銀行強盗シリーズ」と「学校シリーズ」を中心に、ゴロハチVXの作品群を研究することを目的としています。しかしながら、個々の作品の分析に入る前に、そもそもゴロハチVXとはどのようなうごメモ作者であったのかをイメージしておくことは、今後の作業をスムーズに進めるためにも有益であるはずです。この見地から、ここでゴロハチVXの作風について確認しておくことにしましょう。
以下に、ゴロハチVXにもっとも勢いがあった時期の作品のなかで、ゴロハチVXらしさがとくに良くわかるものをひとつ紹介します。いわゆる「学校シリーズ」No.88です。視聴に際しては音量に注意してください。
いかがでしょうか。内容の分析はいずれ別の機会に行いますが、本作はゴロハチVXの作風が如実に現れている作品だと思います。ネット上でゴロハチVXを次のように評している人がいますが、まさに「言い得て妙」ですね。
「絵はごちゃごちゃせず、切り替えの間も良く、クスっと笑えて、
この先どうなるの?って期待させて終わったりする流れ・・・いいですね」
わたしは、これに加えて、ゴロハチVXの作風の魅力は、程よいシニカルさと子どもなりの反体制・反権力の姿勢の存在にも求められると考えています。「反体制」などというと大げさに聞こえ、また語弊があるかもしれませんが、ようするに親や教師に代表される大人社会に対する反発・反抗の気持ちの現れと言い換えてもいいでしょう。これは、大人にとってはある意味やっかいなものですが、子どもの成長には重要な要素のひとつです。このような姿勢がさりげなく織り込まれているからこそ、ゴロハチVXの作品は、うごメモの世界に生きる少年少女たちに強く支持されたのだと思います。
この観点から、もうひとつ作品を紹介しましょう。ゴロハチVXの作品としては異色のスタイルに分類されるものですが、わたしは個人的に一番気に入っています。実際、うごメモ界での人気も高かったと聞いています。「学校シリーズ」No.107です。
ゴロハチVXの作品を観るときに、いつもわたしの頭のなかに浮かぶのは、「トムとジェリー」です。もちろん、贅を尽くしたアメリカ映画と小学生の作るうごメモとでは同じ土俵に上がれるわけもありませんが、両者の基本的発想には通ずるところがあるように思えるのです。
実際、ゴロハチVXは「トムとジェリー」が大好きでした。21世紀に入って版権が切れたためなのか、ゴロハチVXの幼いころには1枚500円程度で「トムとジェリー」のDVDが販売されており、わたし自身、子どものころにTVのアニメタイムで繰り返し「トムとジェリー」の再放送を視聴した思い出があったため、書店等でDVDを見かけるとついつい手にとっていました。幼稚園から小学生時代のゴロハチVXは、しばしば「トムジェリ・パーティー」などと称してジュース片手にTVの前に陣取り、飽きもせず繰り返しDVDを観ていました。そんなことも彼の作風に影響しているのかもしれません。今でも時に、「トムとジェリーを観たい」と言うことがありますね。
以上、今回は、ゴロハチVXの略歴を確認するとともに、その作風について分析しました。次回は、最初の作品を中心に検討を加える予定です。
0 件のコメント:
コメントを投稿