2021年3月9日火曜日

5.銀行強盗シリーズ開始

第1話 ヤマダ タケシ登場


 「銀行強盗シリーズ」第1話の公開は2012年の4月30日。ゴロハチVXの代名詞のひとつである作品シリーズが、この日、いよいよスタートしました。


 主人公は、キャッツアイ型サングラスと給食用マスクを着用した白い棒人間。そう、ゴロハチVX作品の人気キャラクターのひとり「ヤマダ タケシ」です。第1話の時点ではまだ名前がありませんでしたが、シリーズ第3話(2012年5月5日)から「たけし」と呼ばれるようになります。


 また、のちに「学校シリーズ」第38話(2012年10月9日)において「ヤマダ」姓であることが明らかになります。


 なぜ、彼の名前は「タケシ」だったのか。
 命名の由来はもはやゴロハチVXも覚えていないそうですが、わたしすなわちゴロハチVXの父親の本名が「タカシ」ですので、何らかの影響があったかもしれません。また、言わずと知れた「ジャイアン=剛田武」の存在も無視はできないでしょう。

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  「ヤマダ」については、これも言うまでもなく日本人の姓としては極めてポピュラーなもののひとつですので、選択の理由をあえて分析する必要はないのかもしれません。ただ、ゴロハチVXの母親の旧姓が「ヤマダ」でしたので、なにがしかの関係はあるかもしれません。

キャラクター設定


 サングラス&マスクといういでたちは、結果的にタケシに唯一無二と言ってもよい強烈な個性を与えていますが、ゴロハチVXによれば、いわゆるオリ棒として特別なキャラクターを作ろうと意識したわけではないそうです。
 そうではなくて、「銀行強盗の犯人であれば、身元を隠すために何らかの変装をするはずだ」という、ストーリー構成上の自然な発想の流れのなかで生まれた設定だということです。タケシの年齢は、作者であるゴロハチVXの当時の年齢と同じ小学6年生すなわち11歳または12歳ですから、彼にとって実行可能な精一杯の変装手段が、派手でチープなサングラスであり、また給食用マスクだったというわけです。
 もっとも、もし本作が今描かれるとしたら、「アベノマスク」などと揶揄させることを嫌い、給食用マスクはコスチュームとしては採用されなかったかもしれませんね。サージカルマスクでは、タケシのイメージも少し異なっていたかもしれません。

テーマとメッセージ


 小学生が銀行強盗を敢行したはいいけれど、周囲の人々に適当にあしらわれたり、さまざまなアクシデントに見舞われたりして、結局目的を果たせず泣いたり笑ったりするというオチ。これが銀行強盗シリーズ全体に通底するテーマです。
 ゴロハチVXによると、当時、野球部の後輩相手にバカ話をしていたところ妙にツボにはまるネタがあり、それがまさに銀行強盗シリーズのプロットそのものだったのだとか。そのアイディアを具現化してできあがったものが、銀行強盗第1話なのだそうです。

 さて、ここで第1話の内容について少し検討しておきましょう。
 ストーリーの舞台は銀行強盗という犯罪とそれを取り巻く環境です。ここからは、幼いながらも反体制の匂いが漂ってくるように感じられます。
 また、作中、皆が言うことを聞いてくれないためにタケシが泣いてしまう場面からは、必ずしも自分の思い通りにはいかないこともある家庭や学校生活のあり方すなわち社会の不条理にたいするもどかしさが、そこはかとなく滲み出ているようにも思います。
 さらに、3万円を要求したにもかかわらず、最終的には100円を獲得しただけで狂喜するタケシの姿の描写は、作者自身にも内在するであろう子どもらしい厚かましさや単純さを客観視した上で、これを皮肉っているのでしょうか。

人気爆発


 本ブログの「4.VS棒人間ネタ」でも触れたように、ゴロハチVXは、銀行強盗シリーズ以前の段階ですでにそこそこ人気のある作者でした。しかし、銀行強盗シリーズの開始によって、彼の人気は爆発します。この点について、とても印象に残っているエピソードがありますので紹介しておきましょう。
 前述のように、銀行強盗シリーズ第1話の公開は2012年の4月30日でした。その日の夜から、それまではめったに鳴らなかったわたしの携帯電話のメール着信音がピコピコし始めました。当時ゴロハチVXはまだ携帯を持っていなかったので、「うごメモシアター」利用のためにわたしのメールアドレスを登録していたのですが、作品にたいするコメント投稿通知が続々とわたしの携帯に届いたのです。数日後、その年のゴールデンウィーク中盤の5月3日あたりには、電源を切らなければならないほどでした。
 これに気を良くしたゴロハチVXは、5月4日に第2話、5月5日に第3話と、立て続けに銀行強盗シリーズを描き飛ばします。その結果、5月4日夜には作者ランキング18位に、5月5日にはランキング5位に躍り出ます。


 


すごいことになってきました。

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